玉掛け作業に必要な力学~慣性の法則~

この間久しぶりにクレーンゲームをしたんだ。

子供のころは難しかったけど、大人になったから簡単に取れるとなぜか思いこんでいたよ。

大人になっても難しいね。

しかも始めだしたら、あと2回くらいで取れそうな気がするとか、
ここでやめて次の人が取ったらいやだなとか考えだしてなかなか終われないよね。

結局、結構な金額を使ってしまったよ。あっ、景品が取れたかどうかは聞かないでね。

そう、クレーンゲームをしているときに思ったんだけど、クレーンの移動を止めた時
急にガンッって止まるから、つかむ部分が揺れて景品を狙うのが難しかったんだ。

なんでこんなに揺れるんだ!ってちょっと怒ってしまったけど、「力学か!」ってひらめいたよ。

 

さて、ここから本題に入るよ。

クレーンゲームだけじゃなくて玉掛け作業にも「力学」の知識が必要なことは知っているかな。

玉掛け技能講習で教わったな~って思い出した君もいるかな?

もし力学を知っていたら、玉掛け作業中にひやりとする事を回避して行動することができるんだ。

そこで今日は玉掛け作業に必要な力学の中の1つ、「慣性の法則」について説明していくよ。

 

まず「慣性」がどんな力かというと、
物体には、止まっている物体に力を加えなければ、そのまま止まり続け、
動き続けている物体に力を加えなければ、そのまま動き続けようとする性質があるんだ。

その性質のことを「慣性」というよ。

ニュートンの運動の法則の1つで、運動の第一法則とも言うみたいだね。

慣性の大きさは質量に依存していて、質量が大きい物体ほど慣性が大きくなるんだ。

当たり前の事だけど、軽いものは動かすのも止めるのも簡単で、
重たいものは動かすのも止めるのも大きな力が必要だよね。これは慣性が関係しているからだよ。

 

ここからは玉掛け作業中の事例を交えて紹介するね。

事例①
天井クレーンを車輪止めに衝突させ急停止したため、慣性力により荷が大きく振れて危なかった。

天井くれん

君たちも、似たような経験はないかい?

そんなこと当り前じゃないか!って思う君もいると思うけど説明するね。

まず天井クレーンが一定の速度で動いている時、荷も同じ速度で移動しているよね。

その状態で天井クレーンが車輪止めに衝突すると天井クレーンは急停止するけど、
荷は慣性によって、そのまま動き続けようとするんだ。だから、荷振れが起きるんだ。

 

この荷振れを防ぐためには、クレーンを使用した作業を行う前に、
クレーンの運行経路の確保・確認をして急停止をしないように準備する必要があるよね。

また、もし荷振れが起きたとき運転者は荷に衝突しないように、
吊り荷から3m以上離れて立つなど、3・3・3運動が有効だよ。

 

事例②
荷を巻き下げているとき急停止したため、玉掛け用ワイヤロープが切断し荷が落下した。

巻下げ

この事例は、張力も登場するからちょっとややこしいんだ、、。

まず荷を一定の速度で巻き下げている時は、
ロープには荷の質量による力と等しい大きさの張力が作用しているんだ。

この状態から急停止すると、荷には慣性力が働き、ロープにかかる張力は慣性力の分だけ増加するよ。

つまり巻き下げ中に急停止すると、
物体を上下に引っ張る力がそれぞれ大きくなって、すごく危険ってこと。

 

荷の巻下げ中に急停止するってことは、荷下ろし場所に何かあったってことだと思うんだ。

さっきと似た話になるんだけれど、クレーンの作業前に荷下ろし場所の確保と確認をして、

急停止しないようにする準備が大切だよ。

 

今日は慣性の法則について説明したよ。いろいろ説明したけどものすごく簡単にまとめると、

重たいものほど動きを急に止めると慣性が大きく働いて、大変なことになるってことだよ!

これを知っておくだけでも、こうすると危険!って考えて行動することができるよね。

ミスターT

君たち、今日も一日ご安全に!

 

【参考文献】一般社団法人 日本クレーン協会「玉掛作業の安全」 p51~p53